日本人も加わりオレオレ詐欺…カンボジアはなぜ特殊詐欺グループの拠点になっているのか?

カンボジアで韓国人80人が誘拐され、その中の大学生1人の死亡が確認された。遺体には拷問された跡があった。これを受けて韓国政府はカンボジアのポイペトなど一部地域への渡航を禁止した。
先日カンボジア警察による犯罪集団の拠点への捜査が行われた際に日本人29人が保護されたが、彼らはその後日本に移送されて逮捕された。オレオレ詐欺の「かけ子」だったとされる。また先ごろ名古屋在住の中国人夫婦が逮捕されたが、彼らは日本人をだましてカンボジアに送り込む仕事をしていた。
カンボジアには50カ所以上の詐欺拠点があり、推計で数万人から20万人が犯罪行為を行っているとされる。その国籍は中国、韓国、台湾、日本、マレーシアなどと多岐にわたるが、組織の中心に中国人がおり、当然のこととして構成員は中国人が多い。
現在、カンボジアには数十万人の中国人が滞在しているとされるが、正確な数字は分かっていない。中国からカンボジアへは陸路で簡単に密入国できるためだ。
ベトナムは中国からの不法入国に対して厳しく対処しているが、それでも山岳地帯の国境から多くの中国人が密入国していると噂されている。中国、ラオス、カンボジア、ミャンマー、ベトナムの国境は陸路でつながっており、国境付近に多くの少数民族が住んでいることから、国境管理はどの国にとっても難しい。日本人がイメージする厳格な国境管理など存在しない。
中国で個人信用スコアが「赤」になると?
カンボジアが電話やネットを用いた詐欺の拠点になっていることには、中国の不況とデジタル監視社会が関係している。中国では不動産バブルが崩壊して以降、住宅ローンが支払えない、事業の資金ぐりが悪化した、カードローンの支払いに窮する、などの事案が多発している。中国では借金を返済できなくなることは社会的な死を意味する。それは、個人信用スコアが「赤」(ブラックリスト入り)になるからだ。
これまで中国人は電子決済を喜んで受け入れてきた。屋台での支払いもスマホで済み、それは進んだ社会の象徴とされた。中国を訪れた日本人がスマホ決済の普及に驚き、その先進性を評価したものである。しかしそれは国家による個人情報の完全な管理を意味した。
個人信用スコアが「赤」になると、新たな借り入れができないだけでなく、飛行機や高速鉄道にも乗れなくなる。ホテルにも泊まれない。もちろんスマホ決済もできず、パスポートも作成できない。社会活動が著しく制限される。
便利だと思ってスマホ決済を利用していたが、いつの間にか全ての行動が政府に把握され、コントロールされるようになっていた。中国人の知人によると、信用スコアが「赤」になった人は中国では生きていけない。そんな人は陸路でカンボジアに移り住むしかないと(…続きを読む)。
