「稼げる」と誘われカンボジアで「かけ子」、中国人監視下で朝から晩まで詐欺電話…「成績」悪いと暴行も
東南アジアに渡航し、現地の特殊詐欺グループに加わった日本人が相次いで逮捕されている。「高収入」「稼げる」といった甘い言葉に誘われて海を渡ったものの、厳しい監視下で詐欺電話をかけ続けていた容疑者たち。警察の捜査で、暴力で支配された詐欺拠点の実態が明らかになってきた。
「日本人20人以上が塀に囲まれた拠点内の施設で寝泊まりし、事務所で詐欺電話をかけている」。カンボジア北西部ポイペトの詐欺拠点から1月に帰国した男性は、愛知県警にこう説明した。これを機に拠点にいた男女29人が8月、日本に送還され、愛知県警に詐欺未遂容疑で逮捕された。29人は詐欺電話をかける「かけ子」だったとされる。
県警によると、29人は拠点内の集合住宅で暮らしていたとみられる。拠点内にはコンビニや診療所、理髪店、ネイルサロンなどもあり、生活環境は整えられていた。
ただ、拠点外に出るには許可が必要で、出入り口には武装した警備員が常駐していた。一部の容疑者は「ライオンやトラ、ワニが飼われているのを見た」と供述している。
複数の中国人に監視され、組織的に詐欺電話をかける体制が築かれていた。29人は班ごとに仕切られたスペースで、通信会社の社員や警察官などを装い、スマートフォンなどで朝から晩まで詐欺電話をかけた。「業務中」の食事では、和食や中華、ファストフードなどの出前を取ることもあった。
起床や消灯の時間は決められ、詐欺の「成果」はホワイトボードで管理された。監視カメラもあり、遅刻すると罰金を科された。
新人は、マニュアルを暗記させられた。一日の終わりには、かけ子を集めた反省会があった。録音した通話内容を互いに聞き直し、相手をだます効果的なセリフなどを話し合っていた。
ターボライターで
容疑者たちは詐欺の成果が振るわなかったり、「帰りたい」と申し出たりすると、殴る蹴るの暴行を受けた。火力の強いターボライターで鼓膜を焼かれたり、爪をはがされたりもした。県警の調べに「思っていたよりマイナスの環境だった」と供述した容疑者も(…続きを読む)。